子どもの音楽学習で自主性を育てる親と教師の関わり方

子どもの音楽学習で自主性を育てる親と教師の関わり方

「うちの子、練習しなさいって言わないと全然やらないんです」

そんな悩みを抱えている親御さんは少なくありません。音楽教育の現場でも、指示待ちの子どもが増えているという声が聞かれます。でも、本当に子どもは指示がなければ動けないのでしょうか。

実は、子どもたちは本来「やる気」に満ち溢れています。特に未就学の小さな子どもは、生まれてから最初に出会う大人である親の言うことを絶対的に信じており、親がいいと言えばいい、悪いと言えば悪いのです。つまり、子どものやる気を生かすも摘み取るも、身近な大人次第なのです。

音楽学習において自主性を育てることは、単に練習を自分からするようになるだけではありません。自分で考え、選び、表現する力は、音楽の技術向上だけでなく、人生全体における主体的な生き方につながります。本記事では、家庭と教室で実践できる具体的な関わり方をご紹介します。


自主性のある子どもとは何か

音楽学習における「自主性」とは、自分がやりたいことを見つけ、判断し、行動を起こすことを指します。

自主性のある子どもには、次のような特徴があります。自分のしたいことを見つけ、それをイキイキと行う子。そして、自分のやりたいことをするために、自分をコントロールしてやるべきことのできる子です。

子どもが自主的に音楽練習に取り組む様子

指示待ちとの違い

一方で、指示待ちの子どもは、いつまでたっても親や先生が教えてくれるのを待っている状態です。「次は何をすればいいですか」「これで合っていますか」と常に確認を求め、自分で判断することを避けてしまいます。

教育現場でも子どもの「自主性」「主体性」は重要視されています。これらの力を持たない子は、将来的に自分で考えて行動することが難しくなり、社会で主体的に役割を担うことが困難になる可能性があります。

音楽学習における自主性の重要性

音楽は、心の扉を開き、自分自身を表現するための素晴らしいツールです。ただ楽器を弾く技術を学ぶだけではなく、自分の音を聴き、良かった点や課題を見つける力を育てることで、音楽が上達する喜びだけでなく、自己表現力や自信といった非認知能力も自然と身につけることができます。

自主性を持って音楽に取り組む子どもは、演奏後に自分自身の演奏を振り返り、どこが良かったのか、どこを改善できるのかを考えます。このプロセスを通じて、技術の向上だけでなく、問題解決力や創造的な思考力も養われるのです。


親と教師が避けるべきNG行動

子どもの自主性を育てたいと思いながらも、知らず知らずのうちにそれを妨げてしまう行動があります。

過度な指示と管理

「この曲を練習しなさい」「もっと速く弾きなさい」「そこは違う」と、常に指示を出し続けることは、子どもから考える機会を奪ってしまいます。従来の「教え込む」指導方法では、子どもは受け身になり、自分で判断する力が育ちません。

面倒なことを親がやってあげることも、実は子どもの成長を妨げています。例えば、洗濯の手伝いをする時に洗剤の量の調整を親がやってあげたり、食事の準備で食材切りは時間がかかるからと親が下ごしらえをしてあげたりすることです。

失敗を許容しない環境

「間違えないように」「完璧に弾けるまで次に進まない」という姿勢は、子どもから挑戦する意欲を奪います。失敗は学びの重要なプロセスであり、失敗から学ぶ経験こそが自主性を育てます。

音楽教育における親子のコミュニケーション

子どもの意見を聞かない

「この曲を弾きなさい」「こう表現しなさい」と一方的に決めてしまうことは、子どもの自主性を育てる機会を失わせます。子どもの意見を聞き、それを取り入れることで、子どもは自分の考えたことを言葉にすることの大切さを実感できます。

結果だけを評価する

「コンクールで賞を取る」「完璧に弾ける」といった結果だけを重視すると、子どもはプロセスを楽しむことができなくなります。音楽学習における成長は、結果だけでなく、そこに至るまでの試行錯誤や発見のプロセスにこそ価値があります。


家庭でできる自主性を育てる5つの方法

では、具体的にどのような関わり方をすれば、子どもの自主性を育てることができるのでしょうか。

①子どもの意見を聞き、取り入れる

まずは子どもの意見を聞く!そして、それを取り入れてみましょう。例えば、練習する曲を選ぶとき、子どもに何を弾きたいか聞いてみます。そうすると子どもはあれこれ喜んで答えてくれるでしょう。

答えてくれたら、一部でも構わないのでぜひその意見を取り入れてあげてください。子どもの意見を取り入れることで、子どもは自分の考えたことを言葉にすることの大切さを実感できます。自分の意見を伝える大切さがわかると、色々な物事に自分から積極的に関わろうとする「自発性」も身につきます。

②練習計画を子ども主体で立てさせる

小学校低学年のうちは、周りの大人の意見などを聞いて計画を立てることがほとんどです。小学校中高学年になり、計画を立てて物事を進められるようになったら、計画をすべて子どもに任せてみましょう。

例えば、今週の練習スケジュールを立てるとします。どの曲を何分練習するか、どの部分を重点的に練習するか、すべて子どもに決めさせるのです。大切なのは、計画を実行すること。自分の計画で上達できたら「自主的」に色々なことにチャレンジしたくなりますよ。

子どもが練習計画を立てている様子

③面倒なことほど自分でやらせる

子どもが音楽の準備をする時を思い返してみてください。楽譜を出す、楽器を準備する、練習記録をつけるなど、面倒なことを親がやってあげていませんか?

ぜひ面倒なことを子どもにやらせてみてください。そうすることで、日々の音楽活動の中でも当たり前に親にやってもらっていたことが、実はこんなに大変なことだったんだということが分かります。さらに大変なことを自分でやり切ることで充実感を得ることができ、自信を持つことにもつながります。

④選択肢を与え、自己決定を促す

「人に迷惑をかけないこと」「危険でないこと」この2つが守れるなら、やりたいことはどんどんやらせましょう。音楽学習においても、表現方法、練習方法、曲の解釈など、子ども自身が選択できる場面を意図的に作ります。

選択肢を与えることで、子どもは自分で判断する経験を積み、その結果に責任を持つことを学びます。たとえ失敗しても、それは貴重な学びの機会となります。

⑤知識や刺激を与え、実践したくなる環境を作る

例えば「練習はやらなければならないもの」と考えているところに、あえて「練習をしなくても大丈夫、世の中にはもっと大切なことがあるんだよ」と話します。練習以外にも大切なことがあると理解し納得させた上で、「練習をしなくても大丈夫という考えは、自分の将来を作っていく際に重要なことが分からなくなる危険性もある」ことを説明します。

子どもは知らなかった(しかも驚くような)知識を教えてもらうと、それを人に話したくなります。そして、自分の考えのように人に話します。ときに「自分の意見は違う」と反論することもあるかもしれませんが、これも大きなチャンスです。考えをきちんと聞いて、自分で考えたことをほめてあげましょう。


教室で実践できる指導法

音楽教室や学校での指導においても、自主性を育てる工夫ができます。

コーチング的アプローチの活用

従来の「教え込む」指導方法とは異なり、生徒が自分自身で考え、音楽の中で主体的に成長していけるようサポートする指導を行います。レッスンでは、ただ楽譜通りに弾くことを目標とするのではなく、演奏後に生徒が自分自身の演奏を振り返り、どこが良かったのか、どこを改善できるのかを考えてもらいます。

「今の演奏、どう思った?」「どこが一番気に入った?」「もっと良くするには何ができるかな?」といった問いかけを通じて、子ども自身が答えを見つけるプロセスを大切にします。

音楽教室でのコーチング指導風景

選択肢を与える指導

「この曲をこう弾きなさい」ではなく、「この部分、どんな気持ちで弾きたい?」「明るく弾く?それとも静かに弾く?」と選択肢を提示します。音階の違いを聴き取り、多様な考えが出し合える教材設計を行うことで、子どもたちは自分なりの表現を見つけていきます。

失敗を学びに変える環境づくり

間違えることを恐れない雰囲気を作ります。「今のミス、どうして起きたと思う?」「次はどうすれば防げるかな?」と、失敗を責めるのではなく、学びの機会として捉える姿勢を示します。

仲間と共に学ぶ場の提供

オンライン練習室のような、先生や仲間と一緒に取り組む環境を提供することで、一人では続かない練習も自然と取り組む意欲が引き出されます。仲間と一緒に取り組むことで、練習が楽しい「日常」の一部になります。

家にいながら参加でき、保護者のサポートが不要なため、忙しい親御さんも安心して見守れます。先生や仲間と一緒に進めることで、自分から練習に取り組む習慣が身につきます。


発達段階に応じた関わり方

子どもの発達段階によって、適切な関わり方は異なります。

幼児期(3歳〜6歳)

この時期は、音遊びやリズム遊びを通じて、音楽の楽しさを体験することが重要です。生活や遊びの中での音遊び・リズム遊びを取り入れ、創造性を育む音楽づくりを行います。

幼児の音声表現におけるパターンの意味を理解し、言語的表現と歌唱的表現の両方を大切にします。子どもが自由に表現できる環境を整え、その表現を受け止めることが、自主性の芽生えにつながります。

小学校低学年(7歳〜9歳)

専門基礎科目を配置し、基本的な技術を身につけながら、自分の好きな曲や表現したいことを見つける時期です。言葉のリズム遊びから楽器遊びへと発展させ、楽しみながら学ぶ姿勢を育てます。

この時期は、周りの大人の意見などを聞いて計画を立てることがほとんどですが、少しずつ自分で決める経験を増やしていきます。

小学校高学年(10歳〜12歳)

計画を立てて物事を進められるようになったら、練習計画や目標設定を子ども主体で行わせます。自分自身が練習内容や目標を決め、自己管理能力を高めていくことを大切にします。

個々のペースに合わせて学びを進めるため、自信を持って音楽に向き合うことができ、モチベーションも高まります。

中学生以降(13歳〜)

自分の音楽的な方向性を見出し、より専門的な学習に取り組む時期です。卒業論文または卒業研究、卒業制作、卒業プロジェクト等のように、自分でテーマを設定し、探究する力を育てます。

音楽を通じて、社会とのつながりや自分の役割を考える機会を提供することも重要です。


自主性を育てる際の注意点

自主性を育てることは重要ですが、いくつか注意すべき点があります。

放任と自主性は違う

「自主性を育てる」ことと「放任する」ことは全く異なります。自主性を育てるとは、子どもが自分で考え、選択し、行動できるように適切なサポートをすることです。完全に放置するのではなく、見守りながら必要なときに手を差し伸べる姿勢が大切です。

年齢や発達に応じた期待値

子どもの年齢や発達段階に応じて、期待する自主性のレベルは異なります。幼児に高度な自己管理を求めることは現実的ではありません。段階的に自主性を育てていく長期的な視点が必要です。

安全と倫理の枠組みは必要

「人に迷惑をかけないこと」「危険でないこと」という基本的な枠組みは必要です。完全な自由ではなく、社会的なルールの中での自主性を育てることが重要です。

親や教師の忍耐が必要

子どもに任せると、時間がかかったり、失敗したりすることがあります。しかし、それこそが学びのプロセスです。すぐに手を出さず、子どもが自分で解決する時間を与える忍耐が必要です。


まとめ:音楽を通じて生きる力を育む

子どもの音楽学習で自主性を育てることは、単に楽器が上手になることだけが目的ではありません。自分で考え、選び、表現する力は、音楽の技術向上だけでなく、人生全体における主体的な生き方につながります。

指示ではなく選択肢を与え、失敗を許容し、自己決定を尊重する関わりが重要です。練習計画の立案、選曲、表現方法の決定を子ども主体で行うことで、主体的に学ぶ力が育ちます。

家庭では、子どもの意見を聞き取り入れること、面倒なことも自分でやらせること、選択肢を与えることが大切です。教室では、コーチング的アプローチを活用し、子ども自身が考え、振り返る機会を提供します。

音楽は、心の扉を開き、自分自身を表現するための素晴らしいツールです。子どもたちが安心して笑顔を取り戻し、自信を持って未来に向かえるよう、一人ひとりに寄り添ったサポートを続けていくことが、私たち大人の役割です。

音楽を通じて、ただ演奏スキルを学ぶだけでなく、生きる力を育む。そんな音楽教育を、家庭でも教室でも実践していきましょう。

井上音楽教室では、音楽教育とコーチングを融合させた独自の指導方法で、子どもたちの自主性と表現力を育てています。「自分で考える」「自分で選ぶ」ことを重視したレッスンで、お子さまの可能性を引き出します。詳しくはhttps://i-musichool.com/をご覧ください。

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