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子どもの習い事として音楽教育を検討しているご家庭は多いでしょう。
ピアノやヴァイオリンなどの楽器演奏は、単なる趣味や特技の習得にとどまりません。近年の脳科学研究により、音楽教育が子どもの脳発達、学業成績、社会性の向上に大きく寄与することが科学的に証明されています。
この記事では、音楽教育が子どもにもたらす多様な効果について、最新の研究データをもとに詳しく解説します。音楽を通じて育まれる能力は、将来の学習や人生においてどのような意味を持つのか、科学的根拠とともにお伝えします。
目次
音楽教育が脳に与える科学的効果
音楽は子どもの脳に驚くべき影響を与えます。
東京大学大学院総合文化研究科の酒井邦嘉教授らの研究では、5歳頃から楽器演奏を習得してきた中高生は、9歳以降に習得を始めた経験者や未経験者と比較して、音楽判断に対する脳活動が活発になることが発見されました。特に右脳の運動前野外側部や感覚運動野が有効に活用されることが、MRI装置を用いた実験で初めて実証されています。
人間の聴覚は五感の中で最も早く発達する感覚です。赤ちゃんが母親のお腹の中にいるときから育っており、生後11週目ごろから音を聞き分けられるようになります。そして4~5歳の時期に聴覚の臨界期を迎えるため、この大切な期間にできるだけ多様な音楽に接する機会を作ることが、音感だけでなく人として必要な能力を伸ばすチャンスとなるのです。

言語能力の向上
音楽と言語には共通点があります。
それは「リズム」です。音楽のリズムを聴いているとリズム感が育ち、同時に言語のリズム能力も高まると言われています。また、曲に合わせて一緒に歌っていると、さまざまな単語や言い回しが出てくるため、語彙力の向上にもつながります。
さらに、いろいろな楽器の音を聞き分けられるようになることで、発音の違いもわかるようになるそうです。3年以上ピアノ演奏による音楽教育を受けた子どもたちは、受けていない子どもたちよりも語彙が豊富だったという研究データも報告されています。
運動能力の発達
音楽を聴くだけでなく、演奏することで運動能力を高められることがわかっています。
楽譜を見て、周りの音に合わせるために耳を澄まし、楽器を操るために指を細かに動かす――これらの複雑な行為が脳の刺激となって、運動機能を司る小脳を発達させ、運動能力の向上につながります。音楽を聴いてリズム感がアップすると左脳と右脳の連携が良くなり、知覚と動作の連携がスムーズに行われるようになるのです。
一流のスポーツ選手が幼いころ音楽に触れていたというケースが多いのも、こうした理由があるからかもしれません。
出典 東京大学「楽器演奏の習得の脳科学的効用~音楽経験により特定の脳活動が活発化~」(2021年12月)より作成
非認知能力を育む音楽教育の力
学力テストの点数だけでは測れない能力があります。
それが「非認知能力」です。非認知能力とは、忍耐力、自制心、やり抜く力、協調性、自己表現力など、数値化しにくいけれど人生において極めて重要な能力のことを指します。最近の研究では、この非認知能力が将来の収入や結婚生活、健康状態とも深く関連していることが明らかになっています。

忍耐力と自制心の育成
楽器演奏の習得には時間がかかります。
毎日の練習を積み重ね、少しずつ上達していくプロセスそのものが、忍耐力を養います。すぐに結果が出ないことに耐え、目標に向かって努力を続ける経験は、将来の学習や仕事においても大きな財産となります。
また、練習時間を確保するために他の誘惑を我慢したり、練習計画を自分で立てて実行したりすることで、自制心も育まれます。非認知能力の中でも特に自制心は、借金、病気、薬物依存などの問題と関連しており、幼少期に育てることが重要だとされています。
協調性とコミュニケーション能力
音楽は一人で楽しむこともできますが、合唱や合奏など、他者と協力して一つの作品を作り上げる機会も多くあります。
みんなで一緒に歌を歌ったり合奏をしたりするときには、呼吸を合わせたりお互いの音をよく聴いたりすることが必要になります。一つの楽曲を作り上げていく中で協調性が育ち、コミュニケーション能力も身についていきます。音楽の授業や課外活動などに参加している子どもたちには、達成感を覚えて満足感や自信がアップしていく傾向があることも報告されています。
自己表現力と創造性
音楽は感情を表現する素晴らしいツールです。
メロディーや楽器の音色は、感情に関わる脳の部位である「扁桃体」を刺激します。その刺激が豊かな感受性を育て、相手の気持ちを思いやれる、人としての優しさを生み出すと言われています。自分の演奏を通じて感情を表現する経験は、言葉だけでは伝えきれない内面を表現する力を養います。
従来の「教え込む」指導方法ではなく、生徒が自分自身で考え、音楽の中で主体的に成長していけるようサポートする指導を行うことで、創造的な思考力も養われます。演奏後に自分自身の演奏を振り返り、どこが良かったのか、どこを改善できるのかを考えるプロセスを通じて、問題解決力も育まれるのです。
出典 ベネッセ教育情報サイト「音楽教育が子どもにもたらすさまざまな効果~発達段階に合わせたアプローチの方法とは」(2022年12月)より作成
学業成績向上への影響
音楽教育は学力にも好影響を与えます。
トロント大学の調査では、音楽教育を受けている子どものほうが、知能テストや記憶力テストでいい成績を残しており、その影響は長期にわたって持続するという研究結果が報告されています。ワシントン大学の研究でも、9ヶ月の赤ちゃんに1週間音楽体験をしてもらい、彼らの脳を分析したところ、情報処理と認知機能を司る部分が活性化していることが認められました。

記憶力と集中力の向上
楽器演奏では、楽譜を覚えたり、指の動きを記憶したりする必要があります。
この繰り返しの訓練が、記憶力を強化します。また、演奏中は高い集中力が求められるため、集中力を持続させる訓練にもなります。こうした能力は、学校での学習にも直接役立つのです。
数学的思考力の発達
ノースカロライナ大学の調査では、学習の中でも特に数学に効果的という結果が出ています。
これは、リズムを身につける際に自然と分数や比率などを学んでいるからだと言います。音符の長さや拍子を理解することは、数学的な概念を体感的に学ぶことにつながります。音楽と数学の関連性は古くから指摘されており、音楽教育が論理的思考力を育てる効果も期待できます。
外国語習得への効果
音楽を繰り返し聴くことによって、聴く力の発達が期待できます。
さまざまな音の聴き分けが可能になるため、外国語の発音の差を聴き取ることにもつながります。もちろん音楽を聴くだけで外国語を習得できるわけではありませんが、「外国語を聴き取る能力」を持った状態で外国語の勉強を始められることは、大きなアドバンテージになります。
出典 こどもまなびラボ「音楽教育の3大メリットと、脳科学者が主張する “脳力UP” の理由」(2020年2月更新)より作成
効果を最大化する音楽教育の始め方
音楽教育の効果を最大限に引き出すには、適切な時期と方法が重要です。
始める最適な時期
聴覚は2歳頃から発達し始め、4~5歳の頃に臨界期を迎えます。
この時期にできるだけ多様な音楽に接する機会を作ることが理想的です。ただし、楽器の習い事を始める時期は、子どもの発達段階に合わせることが大切です。身体的な発達や集中力、理解力などを考慮して、無理のない範囲で始めることが継続の鍵となります。
東京大学の研究では、5歳頃より楽器習得を始めた子どもたちに特有の脳活動が見られたことが報告されています。一方で、9歳以降に始めても十分な効果が得られることも示されており、「遅すぎる」ということはありません。

子どもの個性を尊重した指導
従来の「教え込む」指導方法とは異なるアプローチが注目されています。
生徒一人ひとりの個性と考える力を大切にしながら、音楽を通じて自分らしさを育む指導です。レッスンでは「自分で考える」「自分で選ぶ」ことを重視し、ただ弾くだけではなく、自分の音を聴き、良かった点や課題を見つける力を育てます。
こうしたアプローチにより、音楽が上達する喜びだけでなく、自己表現力や自信といった非認知能力も自然と身につけることができます。演奏後に生徒が自分自身の演奏を振り返り、どこが良かったのか、どこを改善できるのかを考えるプロセスを通じて、技術の向上だけでなく、問題解決力や創造的な思考力も養われるのです。
家庭でのサポート方法
音楽教育の効果を高めるには、家庭でのサポートも重要です。
ただし、親が付き添って練習を見守る時間が取れない家庭も多いでしょう。そんな悩みを解決する方法として、オンライン練習室などの新しいサービスも登場しています。先生や仲間と一緒にオンラインで練習することで、一人では続かない練習も楽しく取り組めるようになります。
また、日常的に音楽を聴く環境を整えることも効果的です。寝る前に子守歌を歌ってもらったり手遊び歌をしたりと、子どもは日常的に音楽に触れる機会を持つことで、自然と音楽への親しみが育ちます。
音楽教育がもたらす生涯にわたる効果
音楽教育の効果は、子ども時代だけにとどまりません。
幼少期に音楽教育を受けた経験は、生涯にわたって影響を及ぼします。非認知能力は中年以降にこそ重要であり、結婚や寿命とも関連していることが研究で示されています。将来の収入を上げる非認知能力として、忍耐力、自制心、やり抜く力が挙げられており、これらはすべて音楽教育を通じて育むことができる能力です。
人生の「第3の場所」としての音楽
音楽は、学校でも家庭でもない「第3の場所」を提供してくれます。
学校生活が合わないと感じている子どもたちや、少しだけ学校や家庭から距離を置きたい子どもたちにとって、音楽を楽しみながら自分を表現できる場所は貴重です。音楽は、心の扉を開き、自分自身を表現するための素晴らしいツールとなります。
12年間の学校現場での経験を持つ教育者は、「一人ひとりが安心して成長できる環境」の大切さを実感してきました。ただ「教える」だけではなく、子どもたちの気持ちに寄り添い、コーチングを通じて「自分で考え、自分で進む力」を育てていくアプローチが、今求められています。
保護者へのサポート
音楽教育は子どもだけでなく、保護者にとっても支えとなります。
学校に相談しにくいことや、勉強・子育ての悩みなどを相談できる場所として、音楽教室が機能することもあります。コーチングのスキルを活用した専用LINEを通じた相談対応など、保護者の皆さまのサポート体制を整えている教室もあります。
学校との付き合い方のアドバイス、子どもの気持ちを理解するためのヒント、家庭でできる音楽を通じたリラックス方法など、子どもの居場所だけでなく、保護者にとっても「相談できる場所」となることが理想的です。
出典 井上音楽教室公式サイトより作成
まとめ:科学が証明する音楽教育の価値
音楽教育は、単なる趣味や特技の習得を超えた、子どもの総合的な成長を促す教育です。
脳科学の研究により、音楽教育が脳発達、言語能力、運動能力の向上に寄与することが科学的に証明されています。さらに、忍耐力、自制心、協調性、自己表現力といった非認知能力を育み、学業成績の向上にもつながることが明らかになっています。
効果を最大化するには、子どもの発達段階に合わせた適切な時期に始めること、そして個性を尊重した指導を受けることが重要です。従来の「教え込む」方法ではなく、「自分で考える」「自分で選ぶ」ことを重視した指導により、音楽技術だけでなく、生きる力そのものを育てることができます。
音楽を通じて育まれる能力は、子ども時代だけでなく、生涯にわたって人生を豊かにしてくれます。お子さまの可能性を広げる選択肢として、科学的根拠に基づいた音楽教育を検討してみてはいかがでしょうか。
音楽教育とコーチングを融合させた新しい形の音楽教室では、お子さま一人ひとりの個性と考える力を大切にしながら、自分らしさを育む指導を行っています。詳しくは井上音楽教室の公式サイトをご覧ください。






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