「音楽なんて嫌い」と言っていた子が、発表会でピアノを弾いた日

入会の問い合わせフォームに、こんなメッセージが届いたことがあります。

「正直に言うと、本人は音楽が嫌いです。でも、受け入れていただけますか?」

もちろん、大歓迎です。

むしろ、そういう子こそ来てほしい。今日はその子のことを書かせてください。


「音楽嫌い」が生まれる瞬間

音楽を嫌いになる子には、たいてい「きっかけ」があります。

  • 歌のテストで笑われた
  • リコーダーがうまく吹けなくて怒られた
  • 発表会の練習中に「あなただけ音が外れてる」と言われた

たった1回の出来事が、「自分は音楽ができない人間だ」という思い込みを作ってしまう。そしてその思い込みは、何年も消えずに残ります。

だからその子も「音楽なんて嫌い」と言っていました。でも、本当に嫌いだったのは音楽ではなく、音楽の場で傷ついた記憶だったと、今はわかります。

昔手伝っていたピアノ教室でこんなことがありました。


最初の3ヶ月

その子——小学2年生の女の子——が最初のレッスンにやってきたとき、ピアノの前に座るのを嫌がりました。

椅子には座ったけど、鍵盤には触らない。「弾かなくていいよ」と言うと、少しだけ体の力が抜けました。

最初の1ヶ月は、ピアノを弾かないレッスンをしました。音を聴いて「なんか動物に例えたら?」と話し合ったり、リズムを手で叩いたり。音楽を「評価されるもの」ではなく「感じるもの」として受け取る練習です。

2ヶ月目に入ったある日、レッスン室に入るなり「これ弾いてみたい」と言って、鍵盤に手を置きました。

弾いたのは「ねこふんじゃった」の最初の5音でした。

3ヶ月後には、自分で選んだ曲を楽譜なしで弾けるようになっていました。


発表会の当日

「ステージに立てなくてもいい、袖から見るだけでもいい」と伝えていましたが、当日、その子は「弾く」と言いました。

演奏前、舞台袖でお母さんに手を握られながら待っている姿を見たとき、私はこの仕事をしていてよかったと思いました。

演奏が終わって、客席からお父さんが一番大きな声で拍手していました。


保護者の方からいただいた声

「入会するとき、正直、上手になってほしいというよりも、音楽を嫌いなまま大人にしたくないという気持ちが強かったです。ひとりで弾ける子になるとは思っていませんでした。」



「嫌い」は変わる

「うちの子には向いていないかも」「もう手遅れかも」と思っている保護者の方に、はっきりお伝えしたいことがあります。

音楽嫌いは、治りません——という言い方は間違いで、正確には「傷ついた記憶への防衛反応は、安心できる体験を積み重ねることで、ゆっくり書き換わっていく」です。

そのために必要なのは、上手に弾ける環境ではなく、失敗しても大丈夫な環境です。

井上音楽教室では、弾けなかった日も、練習できなかった週も、責めません。「今日はここまでできた」から毎回始めます。


まずは体験に来てください。嫌いでも、大丈夫です

「本人が乗り気じゃないから体験に行きにくい」という方こそ、来てほしいと思っています。

「見るだけでもいい」「触らなくてもいい」から始められます。無理に弾かせようとは、しません。

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「とりあえず話だけ聞いてみたい」という問い合わせも歓迎しています。


井上音楽教室
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